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「ChatGPT」を活用した企業専用のAIチャットツールとは?【山梨中央銀行様】

AIを使ったアプリケーション開発ソリューションの提供

2022年に公開されたOpenAIの人工知能チャットボット「ChatGPT」は、1億人を超えるユーザーを獲得しています。テキストの要約からクリエイティブな活用まで、誰もが気軽に利用できるこのツールは業務効率化に革命をもたらしたと言っても過言ではありません。
2023年10月、アドバンステクノロジー(株)は便利なChatGPTを安全な環境でも使用できるようにChatGPTを利用したAIチャットツールを山梨中央銀行と共同開発し当銀行に導入しました。開発に至った経緯や導入後の反響について、開発担当者であるアドバンステクノロジー(株)AIソリューション事業部グループリーダー小林祐輔氏と山梨中央銀行システム統括部の飯塚陽一氏に話を伺いました。

セキュアな環境で利用できる最新ツールを全行員に触れてほしい

銀行というと情報漏洩が心配になりますが、なぜ銀行内に「AIチャットツール」の導入を検討されたのでしょうか?

飯塚陽一(以下、飯塚): 私たち行員は個人情報の取り扱いに最も注意しないといけないため、「ChatGPT」のような新しいツールが出てきても情報流出への懸念から行内でChatGPTを利用することに前向きではありませんでした。ですが、時代の移り変わりが激しい中で当行員にも”最新の技術に触れてほしい” という想い中で、「安全な環境で使える方法はないだろうか。」とアドバンステクノロジーさんに相談させていただき今回の開発に至りました。

小林祐輔(以下、小林) : 今回、共同開発した山梨中央銀行専用のチャットツールは、ユーザーが話し言葉で質問を入力すると蓄積されたデータを基にして自然な文章で回答を生成するChatGPTを利用しています。
システムを導入するにあたり入出力情報の外部への二次利用や流出のリスクが大きな懸念事項でした。この問題に対処するため行員の方々と協議を重ね、社内のサーバとChatGPTが安全に連携するよう仕組みを整えました。 その結果、情報が外に漏れる心配なく安心してチャットツールを利用できるようになっています。

実は役職者に好評?!!
専門家しかできなかった業務も可能に

実際銀行内にAIチャットツールを導入し行員内の反響はどうですか?

飯塚 : 現在、当行員約2000人のうち50~100名ほどが毎日利用している状況です。一般行員からは、これまで時間がかかっていた書類作成や通知文等をアシストしてくれることで作業の精度が向上し時間も短縮されます。
中には後輩社員との壁打ちに役立っているという声も聞きます。意外だったのが、会議や外部での会合など前に出て話す機会が多い役職幹部にも好評だったことです。

小林 : これまで専門家でなければ対応できなかったプログラミングやマーケティング等の難しいタスクも、生成AIの導入によって初心者でも取り組めるように変化しています。

飯塚 : 私たちはこのチャットツールの利用ガイドラインを定め、機密情報の取扱いについては法令・諸規定の順守を徹底し、行員が安心して利用できる環境を整えています。

組織の要望に応じてカスタマイズが可能

使用してみて気になる点・改善点はどこにありますか?

飯塚:AIチャットツールを導入したことで「業務の効率化が図れた。」という声が多い一方で、「知りたい情報にたどり着けない。」という声もあります。

小林 : 飯塚さんのおっしゃる通り、生成AIは蓄積された大量のデータから統計的に適切な単語を選んで文章を作り出しますが、これが現実とは異なる内容を生成することがあります(= ハルシネーション問題)。
この問題に対処するため、当社では社内でのデータに基づく回答生成(RAG※)や、プロンプトエンジニアリングを利用した回答制限を活用し、ハルシネーションのリスクを極力減らす取り組みを進めています。
また、今後は、よりたくさんのフィールドで活用していただくためにも、より高い性能を持つChatGPTのバージョンに切り替えることも検討しています。
※RAG(Retrieval-Augmented Generation):質問に対する回答を生成する前に関連するテキストを検索して取得し、その情報を利用してより精度の高い回答を生成する機械学習の手法。

【質問を打ち込むと社内文書や最新の情報を取り入れることができる】

飯塚:現在導入しているシステムは当行固有の情報を探索できない素のままの生成AIですが、今後は当行固有の情報を探索して回答を生成できる機能の開発を目指しています。そうすることで、新しく入社してくる行員の方も業務に生じる疑問や不明点を即座に解決できるようになることを期待しています。

 

今後、他の企業でも使用してみたい・触れてみたいという声が広がっていくと思いますが、実際どのような企業や業種に推奨したいと考えていますか?

小林 : 金融機関だけでなく自治体・教育現場・ヘルスケアなど幅広い分野で使用していただけると想定していますが、以下のような悩みや課題を抱えている企業様に導入を推進したいです。
大きく3点あり、1点目には山梨中央銀行様のように生成AIを社内で導入しようと考えているが機密情報の漏洩リスクなどセキュリティ面に懸念を抱えているケース。2点目は、社内の問い合わせ窓口で人手が不足しておりサポートを必要としているケース。最後に、文章の作成や要約、アイディアの創出などテキスト関連の業務で人手が足りないという悩みを抱えている企業様向けに推奨しています。

飯塚:これまで多くの時間をかけていたアナログ作業を安全なAIチャットツールを活用してデジタル化することで業務効率化が図られ、浮いた時間をより付加価値の高い活動に使うことで生産性の向上に繋がることを期待しています。
また、AIが市場データを分析し市場の動向や消費者の行動パターンを予測できるため、マーケティング効率を高め新たな商品やサービスの創出も期待しています。

まとめ

【本開発に携わるアドバンテクノロジー・山梨中央銀行様の開発チーム】

OpenAI社が提供している「ChatGPT」の「文章を生成する力」と「豊富な知識」という長所を生かしつつ、社外への情報流出といったリスクを排した仕様で開発した銀行専用のAIチャットツール。
まだまだ改善の余地があるものの企業のニーズに合わせて柔軟にカスタマイズが可能であるため、生成AIを組み込んだ各種システムの開発・保守サービスを包括的に提供することができます。

担当者から

山梨中央銀行株式会社 飯塚 陽一 様

システム統括部に所属し、銀行内における技術革新の推進役を担っています。2023年にアドバンステクノロジー(株)様と共同で、セキュアな環境でChatGPTを活用した銀行専用のAIチャットツールを開発・導入しました。このツールは、情報流出のリスクを排除しながら、行員が最新技術に触れ、業務効率化を実現するための画期的なソリューションとなっています。特に情報漏洩に対する懸念を克服したことで銀行内外から高く評価され、AI技術の実用化において一歩先を行く存在となっています。

アドバンステクノロジー株式会社 小林 祐輔

アドバンステクノロジー(株)AIソリューション事業部のグループリーダーとして、AIエンジニアとして最先端技術の開発と実装に携わっています。ChatGPTだけでなく、その他のAI技術にも精通しており、多岐にわたるプロジェクトに関わっています。2023年には、山梨中央銀行と共同でセキュアな環境でChatGPTを活用したAIチャットツールを開発しました。